山小屋準備会レポート
天高山岳会「あしび山荘」再建プロジェクトについて・(その1)

天王寺高校山岳会は、昨年(2000年)10月に、奈良県吉野郡東吉野村、明神平(台高山脈の尾根筋にあたる)に山小屋「あしび山荘」を竣工しました。
「あしび山荘」再建委員会建設委員長、石田氏から、竣工までの経緯を伺うことができましたので、数回に分けてレポートしていきたいと思います。



 
1、着工までのいきさつ

  天王寺高校山岳会は、これまで、大又バス停(明神平登山口)から徒歩2、30分の場所に旧山小屋を所有し、高校の課外活動(林間学校など)に利用したりしてきた。しかし、2、3年ほど前に、台風の影響で大幅な修理を余儀なくされ、施設の老朽化も進んでいたため、新たに別の場所への山小屋の再建を検討することになった。(図1参照)

  そこで、山岳会のOBが中心となって一昨年の10月頃、「山小屋建設準備委員会」を設置し(のち「あしび山荘」再建委員会となる)、月1回程度の定例会議を開いて、主に資金の工面、建設の見積、行政との対応策などについて話し合い、候補地の選定、山小屋は非公開とすること、ログハウス式の建物とすることなどが決まり、積雪時の現地調査も行った。 資金面では、山岳会OBだけでは目処がたたず、ワンゲルOBや高校同窓会にも募金を呼びかけた。

  資金に目処が付いた所でGOサインを出し、2000年4月から、約半年の工期で山小屋を建設した。場所が山の奥で、高い場所にあったため、自作はあきらめ、外部発注とした。ヘリコプターによる資材の運搬など業者に依存する面も大きかったが、毎週末・連休はOB相互に連絡を取り合って、基礎工事や資材の加工などを行い、すこしでも「手作り」にこだわったという。梅雨時は、悪天候のため工事が中断することも度々あったが、どうにか10月竣工にこぎつけた。
   今後は、維持管理をどうするかが問題となるが、OB相互のつながりは強くなったという。
 

(図1:あしび山荘周辺図)



 
2、山小屋建設の諸問題
 

  2ー1)場所の選定
    旧山小屋の場合
       登山口(車の入れる場所)から20分程度。土地は村の無償提供。
    あしび山荘の場合
       東吉野村が指定した無償提供の土地の中から選定。
        


   2ー2)土地についての法規制
        明神平一帯は国定公園のため、自然公園法に基づき規制が行われる。
        国定公園内に山小屋を建てる場合は、本来なら「公園事業」として県知事の許認可を必要とする。この場合、山小屋は原則として公開しなければならない。
        実際には、村の許認可事業という形を通し、維持管理の煩雑を考えて非公開とした。

        建設の前に、行政当局による現地調査が行われた。奈良県からは自然公園課、東吉野村からは治山課の職員が同行した。自然公園法に基づく様々な行政指導を受けた。例えば、山荘予定地は、自然歩道(縦走路)から20m以上離れた場所であることとか、建物の高さは8mとか、建物の色は黒・茶系統が望ましいこと、などである。

         関連リンク:(法庫)(日本の自然保護地域



 
    2ー3)建設
      あしび山荘の場合、想定収容人数は50人。面積は5m×10mである。
      ただし、この山小屋は工作物として申請したので、建築基準法に基づく家屋としての扱いは受けていない。ちなみに、無登記の建築物でも火災保険は加入できるとのことである。
    
      2社に相見積もりを取ってもらったところ、地元の工務店では手間賃(500万)、材料費(700万)、その他込みで1400万円、ログハウスキット専門会社では材料費のみで1100万円となった。
     また、資材の運搬には地元のヘリコプターを利用した。
     ヘリコプターの利用料は通常は時間単位であるが、この時は工務店と親密な企業であったため、1往復あたりの料金で計算した。それでも1往復あたり2万円で60往復したため120万円となった。主として生コンの運搬が多かったという。というのも、付近に水場が無いためだった。
    ヘリコプターの積載量の目安は大型なら2トン、小型なら600kgである。
    
      旧山小屋(約30人収容)の建設時は、OB全員の人海戦術で作ったという。このときは、のべ人数にして軽く1000人を越えた。工事の殆どを大学生のOBが中心となって実行した。このことからも、自作の場合は、若いマンパワー(=大学生)の協力は絶対必要不可欠である、というのが石田氏の意見であった。

    詳細な見積書や、建物の図面は次回のレポートで報告します。


     2ー4)資金
      建設費用の見積りと、建設の手伝いに行くためのOBの交通費・食事代、通信費などを考えて、資金総額の目標を2000万円に設定し、出資を募ったが、山岳会OBは200人程度のため、別のクラブであるワンゲルのOBにも出資を募った。山岳会とワンゲルで500万円ほど集まったが、これでも足りなかったので、同窓会に一口5千円で出資を募り、1300万円を集めることが出来た。これで総額1800万となり、GOサインを出した。
     
      資金集めで大変だったのは、出資者の枠を広げると、意見調整が難しくなるということである。
      


    2ー5)管理
      現在、山小屋管理費として年間30万円を計上している。
      内訳は火災保険が年5万円。ただし、旧山小屋時代は火災保険には入らなかった。
      ログハウスの壁に塗る塗料が年10万円。ガラス、扉などの破損修理費に年5万円、さらに30年に一回の屋根の葺き替え工事のために10万円を積み立てている。
      夏の高校の林間学校で高校生300人の利用で、500円/1人×300人で約15万円、さらに一般利用(OBなど)には1000円/1人×150人程度を見込んで15万円、で維持管理に充てる。



 

ということで、今回のレポートはここまでです。どっちかというと覚え書きに近いですが。
また順次、詳細な情報をお伝え出来ればと思っています。
天高山岳会の石田氏は、大変気さくな方で、私の質問に懇切丁寧にお答えいただきました。
改めてHP上ながら、厚く御礼申し上げます。また、「山小屋をぜひとも作ってください」とのエールも頂きました。
また天高山岳会とも連絡を取り合いながら、様々な企画を考えていきたいと思っております。
では、今回はこれにて。

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つづく