下の資料は、天高山岳会の好意により頂いたものです。
山小屋を建てはじめてから出来るまでの奮闘記を、ぜひご覧になってください。
新あしび山荘経過報告 (by石田氏)より抜粋
・・・・・・・(前略)・・・・・・・・・そうして着工への準備は着々と進んだ。基本設計では高◎期山岳部のT氏が図面を引いた。県への建築申請も平行した。そして、着工を4月29日と決定。遠い道程と思われた再建は、いよいよ、その一歩を踏み出したわけである。ワンゲルと山岳部OBを中心に参加を呼びかけ、仮組み作業場の東吉野村木津や明神平へ週末毎に集まり、職人さんに教えを請いながら作業を手伝うという形で、建設を進めることになった。竣工の10月8日までの大まかな作業過程を、以下に記す。
4・29〜30:
好天の連休初日、念願の再建工事スタート。ワンゲル・山岳部OB、現旧教員はじめご家族、友人など2日間で総勢44名が木津に集合。12m長、樹齢100年の東吉野村産杉丸太の樹皮むきを楽しく、賑やか行う。さっそくシルログ(土台丸太)を加工し仮基礎に設置。
5・3〜5:
明神平で基礎部の掘削を開始。重機はなく人力だけが頼り。3日午前、K棟梁親子が鑓型を完了。午後から16名が入山。慣れないスコップやつるはしに悪戦苦闘。布基礎部を掘削開始。4日は24名で大引の束と囲炉裏の基礎を掘削。5日は24名で掘削をほぼ完了、登山道の整備も行う。掘削だけでなく、食料の準備にも連日多くの方々にご尽力頂いた。この間木津ではログの積み上げが3段目まで進む。
5・7〜14:
7日、今宮工高勤務の高XX期K氏が建築科生徒3名を引率し、普段は使わない曲面カンナを体験。13、14日は樹皮剥き・カンナ掛けに加えてチェンソー、フォークリフトの講習。ログは窓下部まで積み上がる。
5・15〜21:
20日は雨天中止。21日はワンゲル中心に総勢29名が参加。樹皮剥きと表面尾化粧仕上げ。一部は明神平に登頂し基礎養生を確認。高XX期Tさん「竹べらを使った樹皮剥きは原始的やけど、やりだすと必死に」。ログは6段目。
5・22〜28:
22日に奈良県より建築正式許可。27日は雨天中止。28日は午後から晴れ作業再開。ログは窓上部まで積み上がる。仮組みを視察したS先生「天王寺には質実剛健が健在や」
5・29〜6・4:
4日はログビルダーA氏指導のもと、階段の踏み板を加工。山岳部下ね期部員含む6名が奮闘。高XX期K君「いい加減な切り口になってしまい、後輩が足を踏み外さないか心配」。ログは10段目。
6・5〜11:
10、11日は先週加工した踏み板をサンダー仕上げ。ログは12段目、2回床面まで。
6・12〜18:
先週末来の大雨で旧あしび付近の斜面が再崩落し、新館とトイレが全壊。本館は奇跡的に被災を免れる。18日に迂回路開拓と山荘の備品・看板を回収。ログは2回床梁があがる。
6・19〜25:
デッキ手すりを素人だけで作成することになり、24日に檜材20本の樹皮剥きから開始、ノッチの加工に入る。本体の棟、母屋の加工が進む。
6・26〜7・2:
29、30日はデッキ手すりのノッチ加工。梅雨中休みの1日、基礎の資材を紅葉谷ヘリポートから明神平へ荷揚げ。1回約600kgを10数往復。手作業で栗割石を敷き詰め、填圧完了。棟、母屋はほぼ完成、木津で棟上げを待つ。
7・3〜8:
梅雨で基礎工事は足踏み。4日に2回目の基礎工事。ベース部に配筋。8日は20名集合し、木津でデッキ手すり作成と旧山荘迂回路整備の二手に分かれて作業。
7・9:
仮組上棟式。約40名が木津作業場に集い、仮組みの上棟を祝う。棟を木槌で嵌め込み、老若の卒業生が神酒を丸太に注いだ。弁当でお世話になった杉が瀬旅館様より赤飯を、材木卸元の西出林業様より日本酒を志として戴き、宴を禍根で竣工の無事と成功を祈る。
7・10〜16:
くもり続きで有視界飛行に頼るヘリが飛べず、基礎工事は一休み。デッキ手すり、室内階段の加工をこなす。
7・17〜23:
18日にデッキ手すり・階段が完成。防腐剤注入。19日生コンのヘリ荷揚げを実施、基礎ベース部の捨てコンと立上げ
部配筋・型枠施行開始。職人は21日まで現地泊し、高XX期Y氏らも作業をサポート。23日はD先生親子が型枠固定作業を手伝う。同日林間学校開校。
7・23〜8・1:
林間学校実施。生コン打設を林間学校生に手伝ってもらう予定が、天候不順で断念。木津では週明けより仮組みを解体。丸太に番号をつけ、ヘリ荷揚げ用に荷造りを済ませる。
8・2〜6:
2日、晴れ間を狙って立上げ部生コン打設決行。Y先生、高XX期S氏と職人計6名で2トンヘリ約15分往復分の生コンを打設。炎天下4時間の突貫作業。4日早朝、ログを荷揚げ。午後型枠を解体。5、6日は延べ17名が集まり地下室整地、セパ折り、基礎天場ならしを行う。
8・7〜13:
7日、土台と大引取り付けからログ本組み開始。8日、床根太を取り付け。9日午前、職人総出で丸太吊り上げ用の「やぐら」を中央部に組む。これはクレーンの無い時代の昔ながらの手法。午後よりログ積み開始。N先生とY先生の手でシルログを固定。8段目まで完了。10日、早朝より再開。数百キロの丸太を、やぐらの滑車を介して人力で積むという壮絶で危険な作業。K棟梁「こうなったらやけくそですわ」。午後6時、桁積みまで完了。11日、2階床梁と母屋、うだちを上げて終了。台風9号が接近。12日、Y先生親子が合流、強風の中棟上げを決行。週初めより連泊の職人は全員正午に下山。13日、卒業生計6名が入山し、断熱材の詰め込みを行う。作業は山場を越え盆休みに。
8・18〜22:
18日、作業再開。垂木打ち付け。高XX期N氏よりラーメンの差し入れ。19日、鼻隠し打ち付け。20日、ガスと降雨の下、野地板打ち付け。21、22日は山岳部の追い出し山行を現地で実施。21日は現役部員ら4名で囲炉裏の自在鉤を吊るす横木用のヒメシャラ倒木を担いで荷揚げ。同夜山荘に初宿泊。22日は現役部員がデッキ階段を組み立て。ルーフィング、軒天、上がり框を施工開始。同日午前建具等をヘリ荷揚げ。
8・23〜24:
両日で上がり框、2階床板を施工完了。24日にデッキ床板施工開始。
8・25〜26:
屋根大工4名が入山、2日間で屋根葺きと板金を仕上げる。1階床と天井板張り開始。
8・27〜31:
27日、1階床板張り完了。北部屋の室内階段取り付け。28日、サッシ組み立て、囲炉裏と地下室降下口施工開始。天井板張り完了。30日、久々の雨。囲炉裏部の耐火煉瓦、南部屋の階段取り付け。31日、雨で資材のヘリ荷揚げ延期。2階手すり、囲炉裏上部にヒメシャラ取り付け。煙突の取り付け。2日間で高XX期K氏が床下断熱材をすべて施工。同日全員下山。
9・2〜8:
週末に延べ9名が作業に参加。高XX期K氏「明神平に立つ新あしび山荘は、すごいの一言」。2日、漂白剤で室内壁丸太の化粧仕上げ。3日、デッキ床の打ち付け。全員で重いデッキ階段を持ち上げ固定。4日、ドアと窓部のキーウェイ(ログ特有の建具固定法)加工が完了し、建具を取り付け。デッキ手すり取り付け開始。同日午前に最終の資材ヘリ荷揚げ。5日、妻壁サッシ取り付け開始。2階手すり仕上げ。素人作のデッキ手すりが取り付け完了。8日までに妻壁サッシ、1階雨戸が完了。故N先生作の頑丈な旧あしびの梯子は、地下室降下口で再利用。
9・9〜14:
9、10日の週末に外壁塗装を予定していたが、前線と台風接近で週明けまで作業を見あわせる。東海地方で集中豪雨。
9・15〜17:
15、16日は横殴りの豪雨。早発隊は入山できたが、後発の高XX期T氏らは増水のため徒渉できず入山断念。室内作業、雨戸・雨どい取り付けと軒天の塗装。N先生作の旧あしびの自在鉤は、大工のM氏が丸太から作った魚と組み合わされ、新山荘でも鍋を支えることに。16日夜、囲炉裏に初火入れ。
9・18〜24:
秋雨がおさまるまで、職人の入山はしばらく中断。週末に高XX期H氏親子らが入山、作業しつつのんびりと過ごす。
9・27〜28:
天候安定し再開。27日、外壁塗装。雨の侵入を防ぐためグループにコーキング処理。囲炉裏の煉瓦目地を仕上げ。雨どいと貯水設備施工が完了。28日、デッキの塗装完了。「再建2000」と再刻印されたおなじみの鐘を正面の梁に取り付け。足場解体、資材整理、道具梱包を経て5ヶ月間の職人の大工作業は同日すべて終了。
9・30〜10・1:
19名で作業と並行して薪作り。デッキ階段たたきの石積み、土台付近にコーキング充填。高XX期O氏らが端材からプロ顔負けの下駄箱を作成。
10・5:
午後、道具と廃棄物をヘリで荷下ろし。同日に消火器、備品類を荷揚げ。
10・7:
竣工式準備。午前より手分けして食材を荷揚げ。竣工式のおでんの準備の傍ら、O先生揮毫の看板を正面入り口上に取り付ける。総勢20数名で前祝いの乾杯。K棟梁が撃った鹿肉、大工のK氏が獲った鮎、現役部員の手による鍋、その他大勢の差し入れの酒に舌鼓を打ちつつ、夜半まで宴を囲む。
10・8:
竣工式。あいにくの霧雨の中、新あしび山荘に70数名が集いその竣工を祝った。挨拶と祝辞の後、K棟梁へ感謝状を贈呈。山岳部とワンゲルの現役部員によって鐘と看板が除幕され、乾杯と相成った。笑顔が囲炉裏の火を囲む、昔のあしびと変わらぬ風景は、天高の新しい歴史として刻まれた。
これだけの難工事を完遂できたのは、一重にその再建を望み支え続けてくださった方々のおかげである。不便な山の中、職人の面子にかけて仕事をされた角真建設の方々とログビルダーA氏抜きには、竣工は有り得なかった。また天高の卒業生、在校生、現旧教員、そのご家族や友人の方々には、多忙の中延べ409人が東吉野に馳せ参じて下さった。この場を借りてその誤報しに感謝申し上げる。お奥の方々のこのような思い入れが、新しいあしびへの愛着として受け継がれると信じている。
最後に、ここまで読んでくださった皆様にお願いを一つ。ぜひ、あしび山荘に:泊まってください。ブナ林を吹き抜ける風、渓谷の清流、満天の星空、全て完備です。使っていただくことは、山荘を長持ちさせることにもつながります。仲間とともにあしびで咲かせる昔話は、この上ない酒の肴となりましょう。皆様のおこしをお待ちしております。